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タイ領内から見たミャンマー東部ウォーレイの国際詐欺拠点。幅5メートルほどの国境の川を挟んだ対岸にある=2025年2月27日、武石英史郎撮影

 1万人もの外国人を巻き込んだミャンマーの国境地帯の詐欺は「闇のビジネス」の底知れない広がりを感じさせる。しかし、国連薬物犯罪事務所(UNODC)のジョシュア・ジェームズ東南アジア太平洋地域サイバー犯罪対策調整官は、世界的にみれば氷山の一角にすぎないと指摘する。

 ――今回問題となっているような「コールセンター詐欺」は世界全体でどのくらいの規模ですか?

 「2023年時点で関わっていた人は、東南アジアを中心に推定25万人。今は少なくとも50万人と推定されます。被害額は数十億ドルという推計がありました。拠点は拡張を続け、アフリカや太平洋地域、東欧にも広がっています。ミャンマー東部の組織は、ほかの地域でも同じことをできるか試しています」

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ミャンマー東部ウォーレイの国際詐欺拠点。屋根の上に衛星電話のアンテナとみられるパネルが並んでいる=2025年2月27日、武石英史郎撮影

 ――なぜ、急拡大したのですか。

 「この犯罪は費用と比べて収益性が極めて高い。(首謀者である)雇用者が圧倒的な力を握り、人件費をそれほどかける必要がない。巨大な建物に数百万ドルをかけ、インターネット環境を整え、賄賂や資金洗浄の費用を払ったとしても、収益に比べれば、わずかな額にすぎません」

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