香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。8月31日までの夏会期には、今回から新たに引田エリア(香川県東かがわ市)と志度・津田エリア(同さぬき市)が加わった。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。
ニール・メンドーザ「合成されし魂」
「つくも神」がわらじに乗り移った――。
畳敷きの部屋で、わらじをはいた金属製の機械が「足」を動かす度、ディスプレー上に異なるつくも神が現れる。
制作したイギリス出身でアメリカ在住のニール・メンドーザさんは、古い道具に宿るつくも神という「日本的で特殊な概念」に魅力を感じた、と話す。作品は消費社会の現代へのアンチテーゼになっている。
一方で、最新の技術を用いているのも特徴だ。三次元スキャンしたわらじのデータをもとに、AIがつくも神を自動生成し、その中からニールさんが選び取った。馬のような目をした白色の神や、ギョロッとした目玉で口を開けて笑う神。数百体以上が現れるそうだ。
わらじのつくも神の部屋から廊下を渡って奥へ進むと別の作品もある。実際のとっくりを使った作品や、ごみ袋の映像作品。いずれも、つくも神に憑依(ひょうい)されている。そのバラエティー豊かな姿や表情を楽しみながら、消費される道具に思いをはせてみてはいかがだろうか。
志度(さぬき市)【アクセス】
最寄りの琴電志度駅から徒歩4分、JR志度駅から徒歩6分。会期中の土日祝日には、志度・津田エリアを巡回する有料のシャトルバスが運行される。最寄りバス停「志度案内所」からは徒歩5分。