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箱根への旅行を計画しているALS患者の松山博さん(左)と長女の三竹真実さんが「ゆめばす」に乗車した=2025年7月19日午後4時25分、神奈川県逗子市、村上潤治撮影
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 全身の筋肉が徐々に衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者に旅を楽しんでもらおうと、改造した救急車を無償で貸し出す事業が始まった。手がけるのは同じ病と闘う男性だ。

 7月19日夕、神奈川県逗子市で、「ゆめばす」と名付けられた事業の出発式が開かれた。1人目の利用者は同県平塚市の松山博さん(77)。小学校教諭を退職後の2009年にALSを発症した。症状は徐々に進み、9年前に人工呼吸器をつけた。いまは顔の表情だけが動かせる。

 妻知恵子さん(76)とともに、初めてデートをした箱根・大観山のレストランでお茶をする計画をたてている。運転は長女の三竹真実さん(49)。ヘルパーの大学生2人にも同乗してもらう予定だ。

 「何回か救急搬送されたことがあるが、生まれ変わった救急車が外出困難な私たちの移動の夢を運んでくれるのはうれしいこと」。目の動きでうったメールのメッセージを三竹さんが代読した。

 事業を手がける畠中一郎さん(67)もALS患者だ。21年4月、逗子市の自宅近くを散歩中、左足のふくらはぎに違和感を感じた。同年8月、念のため検査を受け、「余命3~4年」と宣告された。

 大学卒業後、JETRO(日本貿易振興機構)に入り、欧州やアフリカを駆け回った。米・ハーバード大でMBA(経営学修士)を取得し、経営コンサルタントとして活動していた。

舞い込んだ「救急車いらない?」

 残された時間に何をするか――。余命宣告を受けて考えた。

 「同じ境遇にいる患者や家族…

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