厚生労働省は27日、米バイオジェンが開発した筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新たな治療薬「トフェルセン」を承認した。SOD1という遺伝子の変異がある患者が対象となる薬で、ALS患者の約2%にこの変異がある。
ALSは運動神経が変性する難病で、全身の筋肉が次第に動かなくなっていく。国内の患者数は約1万人で、発症から人工呼吸器を必要とするまでの期間は中央値で3~4年とされる。ALSの原因は複数あるが、SOD1やそれ以外の遺伝子の変異が関連する家族性ALSは5~10%を占める。
変異を起こしたSOD1の遺伝子がつくるたんぱく質は、運動神経の障害を引き起こすと報告されている。トフェルセンは、このたんぱく質を作り出さないように作用し、症状の進行を抑えることを目指して開発された。こうした作用を持つ治療薬の承認は、ALSでは国内で初めてとなる。
108人の患者が参加した海外の臨床試験(治験)では、投薬から28週間後時点で、症状の進行の抑制効果を示す目標は達成できていない。ただ、原因となるたんぱく質を減らす効果などはみられ、承認について厚労省は「代替する治療法がないことなどもふまえて検討した」としている。