Audibleシニアコンテンツディレクターのキーリング・宮川もとみ氏=2025年7月17日午前11時45分、東京都中央区、照井琢見撮影

 俳優・渡辺謙が朗読する井伏鱒二著「黒い雨」(新潮文庫)のオーディオブックが配信されている。他にも東京大空襲の語り部が朗読した「絵本 東京大空襲」(早乙女勝元作、おのざわ・さんいち絵、理論社)や、「ぼくは満員電車で原爆を浴びた」(米澤鐡志語り、由井りょう子文、小学館)など、戦争の記憶を後世に伝える作品が出ている。配信元はオーディオブック大手のAmazonオーディブル(Audible)。シニアコンテンツディレクターのキーリング・宮川もとみ氏に、その狙いを聞いた。

渡辺謙さん「戦争受け止める感性が鈍っている」 心のざらつく作品を

30年以上前、戦争反対の投書を朝日新聞にしていた渡辺謙さん。今も変わらぬ危機感を抱いていると語ります。

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 ――エンタメ作品も数多く配信するなかで、戦争に関するコンテンツを配信する意図は。

 そもそも物語とは、人間が後世に残していきたい事柄や、歴史から学んだ事象を語り継いでいくものですよね。私たちは、お客様の「こういうものが朗読で聞きたい」という声に耳を傾けて作品選びをしています。

 「日本のいちばん長い日」(半藤一利著、文芸春秋)を、アナウンサーの宮本隆治さんに朗読していただいて、8月に配信したこともあります。ただ、特に戦争に関するものを「用意しなくては」と意図しているのではなくて、語り継がれるべき作品を選書しているというつもりではあります。

 遠藤周作さんや山崎豊子さんの小説、茨木のり子さんの詩も。昔から残っている作品を、改めてオーディオブックとして制作して皆様にお届けする。それは必然的に起こっていることかなと思っています。

 ――戦争の記憶を伝える書籍を、あえてオーディオブックで届ける意義をどう考えていますか。

「黒い雨」カバーアート=Amazonオーディブル提供

 Audibleでは、作品をどなたに読んでいただくか、ものすごく考え抜いて選んでいます。

 物語を伝えたいという読み手の思いは、声や朗読に乗って聞き手を引き込む力があります。

 渡辺謙さんは、東日本大震災…

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