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森雅紀さん もり・まさのり 聖隷三方原病院緩和支持治療科部長 2002年京都大医学部卒。沖縄県立中部病院、米テキサス大MDアンダーソンがんセンターなどを経て、21年から現職

 「AYA世代」とも呼ばれる若い世代の肉親を、がんで亡くした遺族の思いには、ほかの世代と比べてどんな特徴があるのか。悲嘆に向き合うため、遺族に対して望まれる支援とは。AYA世代のがん患者を診療することも多い森雅紀・聖隷三方原病院(浜松市)緩和支持治療科部長に話を聞いた。

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 ――2023年にがんで亡くなった人のうち、AYA世代に該当する15~39歳だった人は約1900人とされます。森さんはいま、AYA世代がん患者の遺族調査について解析しているそうですね。

 厚生労働省の委託事業として、国立がん研究センターが2019年と20年に、がん患者の遺族を対象に実施した全国調査があります。このうち、AYA世代のうち20~39歳の患者の遺族に関する結果を解析中です。

 調査の目的は、患者が人生の最終段階でどんな医療を受け、どんな療養生活を送ったかについて、実態を明らかにすることです。回答いただいた方が約5万4千人にのぼるため、世代ごとの解析が可能なのです。

悲嘆、つらさ、際立って強い

 ――これまでにどんなことがわかっていますか

 詳しいことはこれから論文にまとめる予定ですが、現時点で明らかに言えることは、患者が20~39歳だった遺族においてはより上の世代に比べ、患者さんが亡くなったことによる悲嘆、気持ちのつらさが際立って強い、ということです。

 この調査とは別に、以前、全国のホスピスや緩和ケア病棟を利用した患者遺族を対象に「望ましい死の達成度」について尋ねた調査があり、その結果を解析させていただいたことがあります。

 そこでは、20~39歳患者の遺族は40~64歳患者の遺族よりも、患者本人が「人生をまっとうした」と感じにくく、「人に迷惑をかけてつらい」と感じやすい傾向のあることが示されました。

 若い世代の患者からすれば、「まだ死ぬような年齢じゃない、人生が完成したなんてぜんぜん思わない」という方が大部分でしょう。経済的にも社会的にも自立の途上にあり、人格形成の面でもまさにこれから。まだ幼いお子さんをもつ人も。そんなときに死を迎えなければならない。

 がんに伴う痛みなどの症状も、AYA世代は上の世代に比べてより強いことが多く、緩和ケアの効果が十分に及ばないケースも少なくありません。

 さらに、がん患者全般の生存率などが向上している中で、AYA世代における治療成績はそれほど大きな進展がみられていないという現実もあります。

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ヘアドネーションに臨むもっちゃん、こっちゃん。父のこうめいさんや祖父母らが見守った=10月14日、東京都渋谷区

 ――そんな本人をとりまく厳しい状況が、遺族の悲嘆に反映しているのですね。

 そうです。私たちの調査はあくまで遺族を対象としていますので、亡くなっていった本人の本当の気持ちはわかりませんが、ご本人の気持ちを推察するうえで、遺族の声は貴重です。

 ――とはいえ、遺族は患者そのものではありません。医療者として、遺族にできるケアとしてどんなものがありますか。

 それぞれのケースによってま…

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