(12日、第107回全国高校野球選手権長野大会3回戦 長野日大11―4飯田=八回コールド)
六回、飯田は1―1に追いついてなお無死二、三塁。主将の松村健伸(3年)に打席が回った。「ここはまっすぐだ」。初球に狙い球が来た。中前へ2点適時打。一塁へ走りながら、声を上げた。
主将になり「チームをどうまとめたらいいのだろう」と悩んだ。ある本を手に取った。『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力』(シン・ドヒョン、ユン・ナル著、米津篤八訳)。韓国のアイドルグループBTSのVさんの愛読書として話題になり、中学時代に買ったものだ。
2度読み直した。人の心に言葉を届けるには、まず自分自身が変わらないといけないと学んだ。もともと、人に強く言うのは得意ではない。「その苦手意識が言葉を出なくする。その弱さを捨てようと思った」。時に厳しいことも言った。
試合前、「日大に勝ったイメージをしてみよう」と仲間に声をかけた。前回王者相手に一時リードを奪った。だが、最後は力尽きた。「成長した姿は見せられたけど、力不足だった」。涙があふれた。