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博多の街を楽しむりりさん=4月28日、福岡市博多区、波多野大介撮影

 憧れの職業に就き、世界を飛び回っていたりりさん(30)が福岡に移住したのは3年前だった。

 成田空港のグランドスタッフを経て、香港の航空会社の客室乗務員(CA)に採用されたのは2019年。「おいしいものを食べて、観光もできて最高」。夢見心地で1年で30カ国以上を巡った。

 その直後、コロナ禍で暗転する。フライトが月1本ほどに減り、いったん帰国。実家の茨城県にいた21年6月、電話で解雇通知を受けた。覚悟はしていたが、「ショックで泣きながら、しばらく電話を持ったままでした」。

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客室乗務員時代のりりさん。訓練時にシミュレーターに乗っている場面=2019年3月ごろ、本人提供

 失意のどん底から救ったのは、インターネットのライブ配信だった。コロナ禍で在宅時間が増える中、動画配信者(ライバー)として活動を始めた。日頃感じる何げない「雑談」をカメラに向かって一人話すと、視聴者の支持は増えていった。

 CAだった時、「18時」と「8時」を勘違いしたり、隣の先輩のものをうっかり食べてしまったりと周囲を慌てさせてきた。素でハプニングを起こしてしまうのがコンプレックスだったが、ライブ配信では、笑い話として受け入れてもらえた。

 「エンタメに徹しよう」。次第に東京や大阪などを巡り、ホテルを転々としながら配信する生活に変わっていった。

 福岡を訪れ、名物の屋台街に出かけると、料理がおいしいだけでなく、1人でいても必ず誰かが気さくに声をかけてくれた。

 ホテルの延泊を重ねるうちに「こういう文化の街に住みたい」と思うようになり、22年の年明け、福岡市へ移住した。

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りりさんの移住ルート

連載 地方に引っ越してみました

解雇のショックから立ち直ったりりさんは、旅をする中で自分を見つめ直し、福岡で新しい挑戦を始めます。記事の後半では、りりさんが福岡に移住して変わった自身の「価値観」について語ります。

 趣味の食べ歩きを生かし、昨年5月に本格的にグルメ系インフルエンサーとなった。グルメの街は飲食業界の競争が激しいが、店を紹介するインフルエンサーもまた、しのぎを削る。

 今年4月下旬、福岡市内で観光客に人気の創作おにぎり店にりりさんの姿があった。

 スマホを自分に向けて固定す…

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