音楽配信サービスの普及で、最近はCDを買うことがめっきり減り、アルバムについてくる解説「ライナーノーツ」と縁遠くなった人も多いだろう。そんな時代に、音楽プロデューサーの松尾潔さん(57)は、かつて自身が書いたライナーノーツをまとめた本を出した。そこに込めた思いとは。
日本のリスナーが求めた、洋楽の「トリセツ」
松尾さんは、宇多田ヒカルやMISIAらのデビューに「ブレーン」として関わり、CHEMISTRYや平井堅らのプロデュースや楽曲提供を手がけたことで広く知られている。しかし、もともとはR&Bなどアフリカ系アメリカ人による大衆音楽を専門とするジャーナリストだった。
中学時代にブラックミュージックに夢中になり、大学生だった1980年代末に執筆活動を始めた。約10年間で、ライナーノーツは300本以上書いたという。
今年6月に刊行された新著「松尾潔のメロウなライナーノーツ」(リットーミュージック)では、90年代に書いた解説文のうち52本を掲載。「はじめに」と題した書き下ろしの文章で「ライナーノーツ時代の終焉(しゅうえん)は、音楽鑑賞における物語性、コンテクストの喪失とかぎりなく同義ではないか」と問いかけた。「コンテクスト」とは、文脈のことだ。
ライナーノーツはかつて、レ…