〈ノーアウト一塁と、1アウト二塁はどちらが得点の期待値が高いですか?〉
秋田県立湯沢高校。野球部の奈良省吾監督(29)は、グラウンド内のスタッフルームでスマートフォンに向かって話し始めた。
〈アウトカウント・塁状況別の得点期待値は野球において、その時点からその回で平均して何点入るかを統計的に示した値です……〉
数秒すると、画面には大リーグのデータをもとにした得点期待値の表が提示された。
答えているのは生成AIのChatGPT(チャットGPT)だ。
生徒の特徴や適性を伝えると、打順や守備位置についてもチャットGPTを参考にしているという。
特に効率を感じているのは、野球部通信「ナラメモ」の作成だという。試合での課題や練習での気づきを音声で吹き込み、数回やりとりすることでできあがる。
〈苦しい時や耐えないといけない時に、その選手としての本質が現れます。勝負どころや苦しいところで、ボーンヘッド(平凡なミス)が出るということは、まだまだ普段の生活や練習に改善の余地があるはずです〉
毎週1回、A4用紙1枚にまとめて生徒や保護者に送っている。
数年前からパソコンで作成していたが、2年前からチャットGPTを使うことで、作成時間を1時間から5~10分程度まで短縮できた。
都市と地方の環境格差を埋めたい
温泉街として有名な秋田県湯沢市内にある学校だが、4年前から定員割れが続く。野球部も2年前は新入部員が3人しか入らず、部の存続が危ぶまれた。
そこで監督が目をつけたのが…