Smiley face

 互いに違う言語を話す人同士が同じ言語を話すようにやりとりできる、人工知能(AI)を用いた翻訳サービスが増えてきた。AI翻訳は今後、どう進化するのか。翻訳の仕事に取って代わるのか。ドイツのAI翻訳サービス「DeepL」のセバスチャン・エンダーラインCTO(最高技術責任者)に聞いた。

 ――日本のDeepL利用者数はドイツに次いで2番目に多いそうですね。日本の利用者の特徴は。

 「日本はとても重要な市場です。6月にベトナム語とタイ語をDeepLの対応言語に加えました。これは海外に展開している日系企業の要望を受けたものでした。日本の利用者は、翻訳の正確さや完璧さといった品質への要求がとても高いですね」

 ――昨秋、複数の異なる言語間での会話をリアルタイムに翻訳するサービス「DeepL Voice」を始めました。技術的に難しかった点は。

 「それまで取り組んできた文書翻訳と、リアルタイムの音声翻訳では状況が異なります。音声翻訳では、不完全な言葉遣いや発音の違い、通信の遅延などの問題に対処する必要があります」

写真・図版
「DeepL Voice」のデモ画面=DeepL提供

 「音声翻訳において難しい点の一つは、どの時点で何が言えるのか、瞬時に見極めることです。自然な会話の流れに合わせた翻訳をするためには、素早く訳すだけでなく、信頼に足る内容であることが必要です」

1千人以上の言語の専門家がAIモデルを訓練・評価

 「早く訳しすぎると、後から修正することになりかねません。時間をかければ完璧に訳せますが、それではスムーズな対話はできません。そうした中で、言葉の断片から、会話の内容が理解できる最も早い時点を見つけ出す仕組み作りに取り組みました。この点で、日本語は他言語からの翻訳と、言語自体の難しさを併せ持っています」

 ――どういうことですか…

共有