国会で審議中の刑事デジタル法案(刑事訴訟法など改正案)をめぐり、不適切な個人情報の収集がないか監督し、削除を求める仕組みがないことに懸念の声が上がっている。専門家は、欧州連合(EU)がリードする個人情報保護の基準に合致しない、という。
個人情報保護委員会の権限及ばず
焦点になっているのは電磁的記録提供命令で、オンラインを通じたデータの差し押さえにより、捜査機関が収集する個人情報が膨れあがる恐れが指摘されている。
国内では個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会が官民のデータの取り扱いを監督している。行政機関にも指導や勧告ができるが、犯罪捜査に関わる個人情報には権限が及ばない。
4月23日の参院本会議では、立憲民主党の打越さく良氏が「個人情報保護委員会の権限を強化するなどして、独立性のある機関が監督することが必要だ」と訴えた。
鈴木馨祐法相は「捜査当局による個人情報の取り扱いを監督するには、個々の情報と事件の関連性や被疑者の防衛上の必要性を、適時的確に判断して対処することが求められる」とし、「実際に捜査を行っていない外部機関が判断を適切に行うことは極めて困難」と反論した。
EUでは監督機関が「削除命令」
だが、個人情報の保護が厳格…