欧州連合(EU)に中・東欧などの10カ国が同時に加盟した2004年のEU拡大から5月で20年。経済が安定し、当時新加盟国の中で牽引(けんいん)役となった中欧スロベニアのタニャ・ファヨン副首相兼外相が16日、朝日新聞のインタビューに応じた。現状のEUは「非リベラル」を掲げる隣国ハンガリーの抵抗で意思決定に難題を抱えるが、ファヨン氏は「欧州は危機ごとに結束を強めてきた」と強調。西バルカン地域への拡大も訴えた。
スロベニアは1991年に旧ユーゴスラビアから独立。内戦を経験しながらも、イタリアやオーストリアに接する地の利を生かして経済発展し、「旧社会主義国の優等生」と呼ばれた。ファヨン氏は当時ジャーナリストで、2009年に欧州議員に転身。EU加盟の利益について「最も肌で感じられるのは国境検問のない移動の自由だ。単一通貨や共通市場によってビジネスが発展した」と述べた。一方でEUは00年代末からのユーロ危機、15年の難民危機やロシアによるウクライナ侵攻など20年でさまざまな困難を経験したともし、「スロベニアにとっては欧州が結束していることがとても重要だ」と訴えた。
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ただ、スロベニアと同時に加盟したハンガリーは右派のオルバン政権下で司法への介入やメディア規制で批判を受ける。ロシアのウクライナ侵攻をめぐっても同国の反対でEUのウクライナ支援は遅れた。
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