欧州連合(EU)でウクライナ語の通訳を務めていた女性が、規則に違反して非公開の首脳会議で詳細なメモをとったとして契約を解除されていたことが分かった。ロシアのスパイ活動に関与した疑いがあり、ベルギー当局が捜査しているという。
仏紙ルモンドが報じ、EUの行政を担う欧州委員会も10日、事実関係を認めた。
報道によると、女性はロシア人の両親を持ち、フランスとウクライナの二重国籍者。20年以上にわたり、EUや北大西洋条約機構(NATO)などでフランス語とウクライナ語のフリーランスの通訳をしてきたという。
問題となったのは、昨年12月にブリュッセルで開かれたEU首脳会議。ウクライナのゼレンスキー大統領とEU加盟国の首脳らがウクライナへの軍事支援などについて非公開で協議していた際、女性は通訳ブース内で各国首脳の発言などをメモしていたという。
24言語を公用語とするEUでは多くの通訳が会合に立ち会うが、機密性の高い協議でメモを取ることは禁じられている。同僚のチェコ語の通訳が見つけ、警備担当者が女性を建物から退去させた。女性はメモをロシア側に流していたとみられている。
EUの欧州委員会は「数字や名前のメモを取るのは通訳の仕事のうちだが、(女性は)逐語的に過度にメモを取った」と説明した。
女性はその後、通訳の資格を剝奪(はくだつ)され、EU施設への立ち入りも禁じられた。現在はベルギー当局が捜査を進めている。