欧州連合(EU)が昨年成立させた包括的な人工知能(AI)規制「AI法」について、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁は16日、欧州の競争力において「不確実性の源」だと批判した。重大な問題が起きないよう企業などに事前に対応を義務づける「事前規制」を問題視し、「実証されたリスクによって事後評価に基づくべきだ」と根本的な見直しを訴えた。
ドラギ氏はこの日、EUの競争力の課題についてまとめた「ドラギリポート」の発表から1年を振り返って講演した。リポートでは、AIを含む先端分野の遅れを「EUの存続に関わる危機」と位置づけ、気候変動や技術覇権で世界を主導するには、米国同様にAIを活用して生産性を高める必要があると指摘。これを受けてEUも、AI法を含め規制の簡素化を検討してきた。
AI法は使用リスクの程度に応じて4段階で規制や義務を設け、来年8月からは2番目の「高リスク」の使用に対し適用が始まる。これにドラギ氏は、「バランスがとれ、イノベーションと開発を支援するものでなければならない」と強調し、開発の足かせにならぬよう「(技術の)欠点を深く理解するまで一時停止すべきだ」と主張した。
厳格な個人データ保護、AI導入に足かせ
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