政策検証 岸田政権の3年(5)
岸田文雄首相が3年の任期をもって退陣します。「選択的夫婦別姓」や少子化をめぐる対策など、棚上げにしてきた政策は数知れず。宿題は次の首相に引き継がれます。主な課題を6回に分けて検証します。
岸田文雄政権は歴代政権が慎重に進めてきた政策を、いとも簡単に転換させてきた。脱炭素社会をめざす「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を旗印にした原発回帰もその一つだ。
2022年5月、ロンドンで自身が掲げる「新しい資本主義」について講演した岸田首相。最後にグリーン(脱炭素)とデジタルへの投資を挙げ、原発が1基再稼働すれば液化天然ガス(LNG)年100万トン分の価値があると強調。そして、こう宣言した。「原子炉の有効活用を図る」
東京電力福島第一原発事故後、原発に対する世論は極めて厳しくなった。西日本の原発は徐々に再稼働したが、国のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」(エネ基)では、原発の依存度を「可能な限り低減する」との文言が維持された。前回21年の改定では、小泉進次郎環境相と河野太郎行政改革相(いずれも当時)の意向も反映し、再生可能エネルギー「最優先の原則」が盛り込まれた。
経産省幹部「いいようにやらせてもらえた」
その流れを変えるきっかけと…