日本の宇宙開発を支えた主力ロケット「H2A」が、29日に打ち上げられる50号機で引退する。三菱重工業で打ち上げ執行責任者を務める鈴木啓司さん(59)と、49号機まで務めた徳永建(たつる)さん(61)にラストフライトへの思いなどを聞いた。
――お二人は2001年に打ち上げられた初号機から、開発に携わってきました。開発で印象に残っている点はありますか?
鈴木「エンジン部の構造設計を担当していたが、非常に苦労した。特に固体ロケットブースターの取り付け方では、前身のH2よりも多くの荷重が集まる構造だったため、新しい方法を考える必要があった。図形的に考えられるすべての方法を検討し、1年ほどかけて100回以上会議を行った。決まったのは世界でも前例のないオリジナルの方法で、当時は正直『本当にこれでいけるのか』と思っていた」
「最終段階でもトラブルがあった。機体が完成して地上燃焼試験の際に、主エンジンが着火した瞬間に大きく横に振れてしまった。みんなで知恵を出し合って解決した」
徳永「第2段の推進系を担当していた。H2Aよりも使いやすいロケットにするために変更した点が多かったので苦労はあったが、大きなトラブルは少なかった印象だ」
――H2Aは49号機までの打ち上げで失敗が1回だけと、高い信頼性を誇ります。その秘策とは?
徳永「信頼性を高める王道は存在しない。ロケットは同じ設計であっても、部品などが異なり、一つとして同じものはできない。それでも、同じものがつくれるように部品や部分ごとに品質評価をすることが大事だ。担当者間の評価(縦串)に加え、経験者や上席による評価(横串)を実施している。部品変更がある際は、その変更が妥当か経験豊富なOBなどにも第三者的に評価してもらっている」
――6号機の失敗の経験も大きかったですか?
鈴木「6号機は、固体ロケッ…