国連の安全保障理事会にオンラインで出席した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長=国連ウェブTVから

 国連安保理は20日、米ニューヨークの国連本部で会合を開き、イスラエルとイランの交戦について議論した。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長がオンラインで参加。イラン国内の核関連施設への攻撃が続けば放射性物質が拡散する恐れもあるとして「最大限の抑制を求める」と改めて訴えた。

  • 【そもそも解説】イスラエルが攻撃したウラン濃縮施設とは
  • 作戦の成功が危機に イスラエルのイラン攻撃、元准将が語る落とし穴

 イスラエルが「イランの核開発阻止」を攻撃理由に挙げるなか、グロッシ氏は「IAEAは隙のない査察活動を通じ、イランで核兵器開発が行われないよう保証できる」とも強調した。

 同氏は、今後攻撃が行われれば「深刻な結果」を招くイランの施設として、南西部にあるブーシェフル原発や、首都テヘランにある研究炉を挙げた。同原発については、「電力を供給する2本の送電線が機能しなくなるだけで、炉心の溶融につながる可能性がある」と指摘。最悪の場合、住民の避難や安定ヨウ素剤の摂取などの対応に迫られ、影響は周辺数百キロに及ぶ恐れもあると訴えた。

英国「軍事行動では排除できない」

 イランは、核開発は平和利用が目的だと改めて主張した。イスラエルが1981年にイラクの核施設を空爆した際、安保理が「核施設への攻撃は、IAEAによる保障措置体制への攻撃でもある」と指摘する決議をしているとも訴えた。「(今回)安保理が対応しなければ、国際法や決議は選択的に適用されるのだという(誤った)メッセージを伝えることになる」と主張した。

 ドイツとともにイランとの対話に取り組む英国やフランスは外交努力に力を入れる考えを示し、「軍事行動によってイランの核能力を排除することはできない」(英国)と強調した。

 米国はイランを批判しつつ、「核開発の野心を放棄し、国民のための繁栄を選択すべきだ」と述べ、「必要なのは最高指導者の決断だ」と呼びかけた。

共有
Exit mobile version