トイレやタイルのブランド「INAX」を生んだ企業が、愛知県常滑市に誕生して100年。会社の姿は大きく変わったが、高度経済成長期に国産初の温水洗浄機能付便器を開発するなど、「水回りのものづくり」は今に続く。会社の転機と営みの原点を、社長と会長を計20年あまり務めた伊奈輝三さん(86)に聞いた。
1945年 戦後すぐの新規参入
「いまLIXILという会社で水回りが重要な分野を占めていることを考えると、終戦から1カ月後に打ち出した方針は、伊奈製陶、INAXのその後の業態が方向づけられた、大変な決断でした」
伊奈製陶を設立し社長だった父・長三郎さんが1945年に示した「方針」は、戦前に手がけたタイル事業の復活や、洗面台や便器といった衛生陶器への新規参入。同じ森村グループの東洋陶器(現TOTO)会長だった大倉和親さんの許可を得たうえでの、新たな出発だった。
「人々の毎日の暮らしに直結する仕事だから無くなることがなく、こんなに幸せな事業はない。日本の衛生陶器が世界の最先端を行くのも、TOTOと私どもが切磋琢磨してきた結果だと思います」
1985年 社名もブランドも変更
「製陶」を冠した社名は、読みが同じ「精糖」の会社と間違われることもあった。
「消費者にもっと親しまれる…