夕方、仕事のために鴻海(ホンハイ)精密工業の工場に向かう従業員と、仕事を終えて出てくる従業員=2025年4月21日、河南省鄭州市、鈴木友里子撮影

 日本や米国など各国で人気がある米アップルのスマートフォンiPhone。その生産を長年支え、「iPhoneシティー」と呼ばれてきた中国の街が、米国のトランプ関税に揺れている。アップルが生産体制の見直しを迫られているからだ。iPhoneとともに成長してきた街は、今、曲がり角を迎えている。

 北京の南約700キロに位置する河南省鄭州市。鄭州新鄭国際空港から車で10分ほど走ると巨大な工場群が見えてくる。世界で販売されるiPhoneの6割以上の組み立てを担うとされる台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、2010年に開いた工場だ。ただ、外から見る限り社名を示す看板はほとんど見当たらない。

 鴻海傘下のiPhone生産拠点は広東省の深圳や山東省の煙台にもあるが、鄭州工場が最大規模になる。午後6時ごろ、それまでひっそりとしていた工場周辺は、仕事を終えて出てきた従業員や、彼ら向けに営業を始める屋台の人々によって、にわかににぎわい出す。

夕方、鴻海(ホンハイ)精密工業の工場近くには、仕事を終えて出てきた従業員を相手にした屋台も多く立ち並ぶ=2025年4月21日、河南省鄭州市、鈴木友里子撮影

 訪れたのは4月下旬。組み立てラインで働く男性は「3月下旬ごろから残業がなくなった」と話した。男性によると、残業がなくなったのは米国向けのラインだけで「中国大陸や香港向けは影響がない」。そして、こう続けた。「理由はよくわからないが、関税の影響ではないか」

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