日本や米国など各国で人気がある米アップルのスマートフォンiPhone。その生産を長年支え、「iPhoneシティー」と呼ばれてきた中国の街が、米国のトランプ関税に揺れている。アップルが生産体制の見直しを迫られているからだ。iPhoneとともに成長してきた街は、今、曲がり角を迎えている。
北京の南約700キロに位置する河南省鄭州市。鄭州新鄭国際空港から車で10分ほど走ると巨大な工場群が見えてくる。世界で販売されるiPhoneの6割以上の組み立てを担うとされる台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、2010年に開いた工場だ。ただ、外から見る限り社名を示す看板はほとんど見当たらない。
鴻海傘下のiPhone生産拠点は広東省の深圳や山東省の煙台にもあるが、鄭州工場が最大規模になる。午後6時ごろ、それまでひっそりとしていた工場周辺は、仕事を終えて出てきた従業員や、彼ら向けに営業を始める屋台の人々によって、にわかににぎわい出す。
訪れたのは4月下旬。組み立てラインで働く男性は「3月下旬ごろから残業がなくなった」と話した。男性によると、残業がなくなったのは米国向けのラインだけで「中国大陸や香港向けは影響がない」。そして、こう続けた。「理由はよくわからないが、関税の影響ではないか」
iPhone中心のエコシステム 人材派遣業から紙箱まで
米大統領に再登板したトラン…