iPS細胞関連特許を使用したいと元理化学研究所プロジェクトリーダーの高橋政代さんらが国に「裁定」を求めた事態が決着した。裁定請求は取り下げられ、特許権をもつヘリオスなどと和解した。裁定請求の審議に専門委員としてかかわった北海道大の中山一郎教授(知的財産法)にふりかえってもらった。
――経済産業相に裁定請求がなされてから取り下げまで3年近くかかりました。実質的な審議を行った経済産業省の工業所有権審議会発明実施部会は22回開かれ、長い時間がかかりました。
特許法に基づき「公共の利益に必要」だとして裁定請求されたのはおそらく初めてです。裁定制度の運用要領では、「国民の生命、財産の保全、公共施設の建設等国民生活に直接関係する分野で特に必要である場合」などが例示されていますが、それはどういうことかは具体的には示されていません。どのような枠組みで判断したらいいのか、ゼロから議論する必要があったので時間がかかりました。
裁定の手続きは、裁判とよく似ていて、裁定の請求者から意見書が提出され、それに対する反論が被請求者から出てきます。さらに意見書を支える証拠が300弱くらい提出され、吟味するのに時間がかかったこともあります。
――裁判官の考えを示す「心証の開示」に相当することが1年あまりであったそうですが。
それは、「暫定的心証の形成」で、いろいろ留保がついています。まだ審議の途中だが、当事者どうしで自主的な協議で解決をはかることが望ましいという見解を示しました。
――その際に、自由診療の自…