今年収穫されるコメを巡り、各地の農協(JA)が農家に前払いする「概算金」が引き上げられている。60キロ当たり2万円を超え、前年よりも約4割高い地域もある。米価の高騰を抑えようと、政府は随意契約で備蓄米の放出を進める中、すでに新米の争奪戦は過熱し、専門家は米価の高止まりが続く可能性を指摘する。
- JAも「青田買い」、「もうけているんだろ!」農家に相次ぐ不審電話
- コメ価格の「異常事態」伏線は4年前に 今後想定されるシナリオとは
概算金は、主要な集荷業者である各JAが需要や生産コストを踏まえ、コメ農家に支払う前払い金で、コメの流通価格を決める重要な指標となる。例年、各JAが概算金を決めるのは収穫前後の7月末~9月ごろだが、今年は他の業者との競争が激しく、春先から前倒しで金額の見通しを示すJAも出てきている。
全国屈指の米どころのJA全農にいがた(新潟市)は、2025年産のコシヒカリ(1等米、60キログラム)で、前年(当初)より3割以上高い2万3千円を提示。最終的には2万6千円以上を目指す。
同様の動きは東北など全国各地に広がり、JA全農あきたはあきたこまちに前年より4割以上高い2万4千円を示し、今後、概算金の目安になるとみられる。一方で、「先に金額を示すと、別の業者が高値を示すリスクがある」(栃木、茨城、千葉の各県のJAの担当者)などと、様子を見る動きもある。
茨城大の西川邦夫教授(農業経済学)は「(新米の)概算金の高騰は米価の高止まりにつながる可能性はある」と指摘。一方で、「(天候などに左右される)今年のコメの生産量や、政府による備蓄米の放出の影響など不確定要素が多く、秋まで具体的な価格は見通せない」と指摘する。