経済INSIDE

 羽田空港の西端にある築53年のビル。1月17日、その4階に入る東証スタンダード上場の「エージーピー」(AGP)本社で、社長の杉田武久(62)ら取締役4人が来客を待っていた。

 1965年に日本航空(JAL)など当時の国内航空4社の出資で設立されたAGPの主な事業は、空港に駐機する航空機に電力を供給することなどだ。羽田や成田など国内の主要8空港に独自の動力設備を持ち、不可欠な航空インフラとして業界では知られた存在だ。

 やってきたのはAGPの筆頭株主であるJALの執行役員を務める弓崎雅夫(55)とその部下だった。経営管理本部長でもある弓崎は、グループ会社であるAGPと経営面のやり取りを担う立場だ。

 AGP幹部によると、この1週間ほど前、杉田のもとに弓崎から面談を求めるメールが届いた。ただ、詳しい面談理由は伝えられないままこの日を迎えていた。

 応接室に通すと、弓崎は杉田にA4判2枚の文書を示した。そのタイトルに、室内の空気が一気に張り詰めた。

 「貴社の非公開化を通じたより深い協業関係の構築に関する協議開始の件」

 株式公開買い付け(TOB)を行うともある。AGPを買収し、上場を廃止することを意味する。杉田らにとっては「寝耳に水」の提案だった。この日から5カ月以上に及ぶ両社の攻防が始まることになる。

「上場維持」で合意から一転

 AGPは2001年にジャス…

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