日本の宇宙ビジネスの競争力を高めるため、10年で1兆円の「宇宙戦略基金」の運用が今夏にも始まる。政府が宇宙航空研究開発機構(JAXA)に基金を設け、民間企業や大学の技術開発を支援するもので、近くテーマを決める。国際的な宇宙開発競争が激化する中、技術革新につなげられるのか。基金を運用するJAXAの「目利き」が問われる。
基金の第1弾として、2023年度補正予算に計3千億円を盛り込んだ。23年度のJAXA予算の2155億円を上回る規模だ。
優先的に進める技術開発の分野をまとめた「宇宙技術戦略」をもとに、文部科学、経済産業、総務の各省は今月、公募するテーマ案を示した。多数の人工衛星の連携による通信網構築の加速化(950億円)や、月面で使える燃料電池システム(230億円)、ロケットの打ち上げ高頻度化や低コスト化に向けた技術(155億円)など22テーマについて、内閣府の宇宙政策委員会で今月中にも正式に決定する。JAXAは夏にも公募を始め、年度内に支援先を選ぶ方針だ。
政府は、複数年度にわたって使える基金を設けることで、スタートアップや宇宙関連ではない企業による大胆な技術開発につなげたい考えだ。
三菱総合研究所主席研究員の内田敦さんは「宇宙分野は、開発や実装に時間がかかるものも多い。長期的な研究計画を立てられるので、企業や大学からの期待は大きい」と話す。
2040年150兆円の宇宙ビジネス、日本は
民間支援の背景にあるのが…