烏山線を走る蓄電池駆動電車「ACCUM(アキュム)」=2024年11月8日、那須烏山市、海東英雄撮影

 JR東日本は、栃木県の高根沢町と那須烏山市を結ぶJR烏山線が昨年度、7億2700万円の赤字になったと発表した。存続を心配する那須烏山市は、「利用向上委員会」を立ち上げて市民に乗車を呼びかける。11月23日にはイベントを行う予定だ。

 JR東は、利用客の少ない36路線72区間の2023年度の収支を公表。県内では烏山線(宝積寺(ほうしゃくじ)―烏山、20.4キロ)が対象となった。

 運輸収入から設備や人件費などの営業費用を引いた「収支」は7億2700万円の赤字。赤字額は前年度よりも9300万円悪化した。100円の運輸収入を得るためにかかった費用を示す「営業係数」が1265円だった。こちらも前年度より悪化した。営業費用に対する運輸収入の割合を示す「収支率」は7.9%だった。

 ただ、1日1キロあたりの利用客は平均1144人で、前年度比で24人増えた。市によると、単純計算で利用客が年間約9千人増え、7年ぶりに増加に転じたという。1千人未満は改正地域交通法で、路線のあり方を問う再構築協議会の対象となるため、市は増客に躍起だ。

 昨年10月、烏山線全線開業から100年を迎えたことを記念してイベントを実施。利用客への助成金制度もつくった。小学生から高校生までを対象に通学定期券の料金の4分の1を補助したり、市民3人以上で利用すると運賃を全額補助したり。市はこうした取り組みが増客に奏功したとみる。

 6月には「JR烏山線利用向上委員会」(委員長・川俣純子市長)を立ち上げ、増客策をさらに検討中だ。8日にあった委員会では、助成金制度の条件を緩和して通勤定期券も対象にする案や、車両に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」の導入案などを検討していくことが決まった。

 23日には烏山駅前広場で蓄電池駆動電車「ACCUM(アキュム)」が烏山線に導入されて今年で10年となったのを祝うイベントを開く。マルシェを設け、市内小中学校による吹奏楽演奏を行う。JR東もこの日から、車両に10周年記念ヘッドマーク(8種類)をつけて来年3月上旬まで運行する。

 川俣市長は「安心できる状況ではない。危機感を持ち、市民とともに利用向上に取り組みたい」とコメントしている。(海東英雄)

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