JR東海が3月、30年後を見据えた長期ビジョンを公表した。同社はこれまで、経営全体の中長期計画や目標を示してこなかった。ビジョンの狙いは何か。経営管理部の岩崎真也部長に聞いた。
30年後の「あるべき姿」を描く
――これまで、中長期的な目標は示していませんでした。
「主に社員向けに作ったが、外部にも参考として紹介した。東海道新幹線の大規模改修や地震対策、車両の更新計画など個別には出しているが、全体をひとつにまとめたものはなかった」
「3年から5年ぐらいの中期計画を出す会社が多いが、当社は出していない。数値目標を設定すると、それが経営上の最優先事項となってしまいがち。本来やるべきこと、やりたいことを明確にして、数値目標はあえて出さないやり方をしている」
――今回の長期ビジョンは、どのような経緯で出すことにしたのですか。
「コロナ禍が一番大きなきっかけだった。想定していない事態で、東海道新幹線も在来線も、客が全然乗っていない状況で走り続けた。将来を不安に思う社員もいた。将来は人口減少が確実視されている。会社として、30年後の未来のあるべき姿を文字にして社員と共有し、力を合わせてがんばろうという決意表明だ」
――どのようにまとめたのですか。
「あらゆる部署で議論して…