同性愛が違法とされるマレーシアで昨年、「LGBT(性的少数者など)の要素が含まれている」として、スイスの時計メーカー「スウォッチ」の製品が当局に没収される事件があり、マレーシアの裁判所が25日、「押収は違法だった」との判断を示した。英BBCなどが伝えた。
マレーシア内務省は昨年5月、同社の複数の店舗から時計172本を没収していた。没収されたのは「プライド・コレクション」と名付けられたシリーズで、LGBTのシンボルである虹色に合わせた6色で展開。バンド部分に虹が描かれていた。没収後、同社が異議を申し立てて争っていた。
クアラルンプールの裁判所は今回、没収当時は時計の販売に対する禁止令がなかったと判断。14日以内に時計を同社に返すよう国側に命じた。
没収後に明確な禁止令、販売はできない見通し
マレーシア国営ベルナマ通信などによると、没収は印刷物や出版物を規制する法律に基づくものだったが、スウォッチ側は訴訟で、「物品」は同法の対象外だと主張していた。今回の時計の販売を明確に禁じる禁止令が出されたのは、昨年8月になってのことだった。
内務省は「まずは判断内容を精査する」とのコメントを出した。国側が負けた形だが、禁止令の是非に踏み込んだ判断ではなく、時計の販売は引き続きできない見通しだ。
イスラム教徒が人口の多くを占めるマレーシアでは同性愛行為が禁じられており、最長20年の禁錮刑を受ける可能性がある。2015年には、当時野党指導者だったアンワル現首相が有罪が確定して収監された。アンワル氏はその後、恩赦を受けて政界に復帰している。(田中恭太)