野球のU18W杯に出場している高校日本代表は14日、大会連覇をかけてアメリカとの決勝に挑んだ。先発マウンドに、チーム唯一の2年生、末吉良丞(沖縄尚学)が上がった。
- 28球で甲子園を去った「高校最速右腕」が世界一へ向けて解放した力
開幕から8連勝の高校日本代表には、ターニングポイントになった試合があった。
6日の1次リーグ第2戦の韓国戦だ。先発の末吉が二回に2失点して逆転を許した。
19人の3年生は全員、同じことを感じていた。
「末吉を負けさせちゃいけない」
前夜に適時打なしだった打線が奮起した。最速157キロを誇る韓国の右腕から、鋭い当たりを放ってつないだ。
同点打は、坂本慎太郎(東京・関東第一)が変化球に食らいついて打った二ゴロだった。「なんとかしたかった。あのときにチームが一つになった」
全国各地の高校から20人の精鋭が集まる代表チームに、2年生が選ばれることは多くない。
寝食をともにする約3週間、3年生のなかになじめるかどうか、周囲の心配もあった。
不安をよそに、3年生たちは末吉を温かく迎え入れた。選手たちで作ったLINEグループの名前は「末吉JAPAN」だ。
「だって、夏の甲子園の優勝投手ですよ」と、3年生たちは誇らしげに言う。
主将の阿部葉太(横浜)は「優勝投手だからというより、末吉が2年生だから負けさせたくないとみんな思っている」
余計な気を使われるのは、かえってお互いにやりにくい。3年生の方から、気さくに末吉に接した。
同部屋の坂本は、まず「敬語じゃなくていいよ」と伝えた。
西村一毅(京都国際)は末吉にスライダーの投げ方を教わり、お返しにチェンジアップを教えた。ブルペンの脇では、石垣元気(群馬・健大高崎)が末吉に肩を寄せ、奥村頼人(横浜)は「弟のようにかわいがっている」と自慢げだった。
「末吉JAPAN」として短期間で結束したチームは、この大会で何度も粘りを見せた。
11日、決勝ラウンドのアメリカ戦は坂本が「やったことがなかった」というカット打法で12球も粘って四球をもぎとり、逆転勝利を呼び込んだ。
最大4点差を追ったパナマ戦は、不振だった大栄利哉(福島・学法石川)がタイブレークの延長九回、「高校で初めて」の犠打を決め、サヨナラ勝ちにつなげた。
試合を重ねるたびにチームとして成熟し、何度も劣勢をはね返した。決勝前夜の13日、阿部は言った。
「最高のチームに仕上がった」
チームが結成された8月末から、4人の3年生が18歳の誕生日を迎えた。
大人の階段をのぼる優しい3年生たち19人に囲まれて、末吉は堂々と左腕を振る。