会社を危機に陥れる分かれ道は、株式譲渡が完了する直前にあった。
M&A仲介を通じて短期間に多くの中小企業を買収していたANEW Holdings(ANEWHD)。その買収先の一つ、映像制作会社パラダイス・カフェの株式譲渡契約は昨年6月14日に交わされた。その日に株式代金の一部である約5400万円が社長に振り込まれ、そのうち2000万円が仲介業者へ報酬として払われた。残る株式を持つ従業員らへの支払いは、6月末を予定していた。
だが、多額の支払いを10日後に控えた6月20日、パラダイス・カフェの社長は経理担当者とともに東京・神保町の雑居ビルへ呼ばれた。
「米国に資金があるけれど」
ANEWHDが本社とする東…