ウクライナ東部アウジーイウカの前線で2024年3月22日、榴弾(りゅうだん)砲をロシア軍陣地に向けて発射するウクライナ軍兵士=AP

 ウクライナ支援のあり方が焦点となった北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で強く打ち出されたのが、将来的な加盟までの「架け橋」と呼ぶ過渡的な措置だ。

 各国からの軍事支援や兵士の訓練を調整する司令部をドイツに新設してNATOとウクライナ軍の相互運用性を高めることや、ウクライナのキーウにNATOの文民の上級代表を置いて連携を強化することなどが次々に掲げられた。来年に最低400億ユーロ(7兆円)の軍事支援を提供することも誓約した。

 米国は今回の首脳会議にあわせ、地対空ミサイルのパトリオットを含めた防空システム5基をドイツなどとともに供与することや、オランダとデンマークが米国製戦闘機F16の供与手続きを進めており、今夏に運用を始める見通しであることも発表した。

トランプ対策の一方で、戦局の打開は厳しく

 これまでNATOの連携を主導してきたバイデン米大統領は6月末の討論会で高齢による衰えを露呈し、足元の世論調査だけで判断すれば、NATOやウクライナ支援に懐疑的な共和党のトランプ前大統領が復権する可能性の方が高い。「架け橋」は、米国で再びトランプ政権が発足しても直ちに支援が途切れないようにする対策という側面がある。

 ただ、ウクライナの苦戦が続く戦局を打開したり、NATOの中で欧州が米国に過度に依存している構造的問題を解決したりするにはほど遠い。

 バイデン政権下でさえ、米議…

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