「OSO18特別対策班」のリーダーを務めた藤本靖さん

 北海道の東部で牛を60頭以上襲ったヒグマ「OSO(オソ)18」が駆除されて、今月で2年。捕獲作戦を指揮した特別対策班のリーダーだった藤本靖さんは「人間が作った怪物だった」「第2のOSOが生まれる可能性は高い」と指摘する。虚像が入りまじったOSO18の真の姿とは。人間に残した課題とは。

動物園と変わらぬ環境

 ――北海道庁からの依頼で、2021年11月に発足した「OSO18特別対策班」のリーダーに就き、23年7月の駆除まで約2年にわたり追跡を指揮しました。

 「私自身は、狩猟免許も銃も持っていません。本業は、道東の標津町にある自動車修理工場の経営です」

 「趣味が釣りなのですが、サケが遡上(そじょう)する地元の川では、ヒグマに遭う確率が格段に上がります。クマの数が急に増えてきたことに危機感を覚え、2006年にNPO法人『南知床・ヒグマ情報センター』を設立しました。地元の自然への土地勘を生かし、クマの生態を調査・研究しながら、腕利きのハンターも組織して捕獲もしていました」

 ――クマの生態は、どうやって調べるのですか。

 「大事なのは、個体を識別することです。大半のクマは、人に遭ったら逃げます。捕獲せざるを得ないのは、人や家畜を襲ったり農作物に手を出したりする、ごく一部の『問題個体』です。山中にカメラを仕掛けて、付近で活動する頭数や様子を調べたり、ワナで捕らえたクマに発信器をつけて山に戻し、行動を追ったりします」

 「そうして活動地域が特定できたら、行政と協力して注意喚起の看板を立て、SNSでも発信します。人間とクマが遭わないことが、お互いに最大の防御だからです」

 ――「怪物」とも言われたOSOは、どんな個体でしたか。

 「OSO18という名前の由来は、19年夏に最初に被害が確認された地名『オソツベツ』と、そこで測定された足跡が幅『18センチ』とされたことです。当初は、その足幅から、体重400キロ前後の大型と推定されていました」

 「ヒグマは一般的に、動物を骨までかみ砕いてきれいに食べてしまう習性がありますが、OSOの場合は、襲った牛の内臓と肉だけを食べていた。襲いかかるだけで、殺して食べていない場合もあり、『まるで狩りを楽しんでいるようだ』という声もありました」

 「ただ、自分たちの目で襲撃現場を調べると、虚像が独り歩きしているとわかりました」

 ――実像はどうでしたか。

 「22年の夏、自分たちで初…

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