台座にヘッドマークを取り付ける北野詩織さん(左)と大石空翔さん(中央)=2025年3月28日午後1時44分、熊本県人吉市、今村建二撮影

 JR九州の観光列車「SL人吉」を長らく牽引(けんいん)し、昨年3月に引退した蒸気機関車「8620形58654号機」(愛称ハチロク)。昨年11月に熊本県人吉市に「里帰り」した際、「SL人吉」のヘッドマークも一緒に市が譲り受けた。貴重な逸品のため、普段はショーケースに入れていたが、屋内展示用の台座を地元の球磨工業高校の生徒が製作し、市に寄贈。台座付きで展示されている。

 ハチロクは1922(大正11)年に製造され、九州各地を走行。2度の引退を経て、最後はSL人吉として走った。「豪雨復興の象徴として保存したい」と、里帰りを願った人吉市にJR九州が無償譲渡。肥薩線・人吉駅そばに屋外展示されている。

 あわせて譲られたのが「SL人吉」のヘッドマークだった。ハチロクの顔として定着しており、イベントの際には取り付けられるが、人気のある貴重な逸品のため、普段はショーケースに入れていた。「せっかくなので機関車に付けているのに近い状態で見てもらいたい」と考えた市の職員が、地元の球磨工業高校に台座づくりを相談した。

 「学んだ技術で地元の役に立てれば生徒の自信になる」と考えた同校は、部活動の伝統建築部と溶接部で受けることにした。

 両部の計6人が2月に着手。伝統建築部の生徒は、地元産のヒノキで台座を作った。高さ120センチ、幅80センチでキャスター付き。釘は使わず、込み栓で木と木をつなぐ伝統技法を用いた。枕木と線路をイメージしたデザインにもこだわった。

 重さ12.3キロのヘッドマークを掛ける鉄製の支柱は溶接部が手がけた。SL人吉で使った支柱と同じものを模したという。

 3月28日に贈呈式があり、伝統建築部の北野詩織さん(3年)と大石空翔(たかと)さん(同)が出席。北野さんは「機関車の顔ともいえるヘッドマークの台座を作れてうれしい。大切に使ってください」と話した。

 市では、人吉駅近くにある「人吉鉄道ミュージアムMOZOCAステーション868」での展示を始めた。いずれは台座製作の様子を写した写真や説明文も添えたいという。

 市は、ハチロクを人吉復興の顔として活用する考えで、いまは静態保存しているが、人吉駅そばに整備した展示用線路の上を空気圧で動かす動態保存をめざしている。

共有
Exit mobile version