「自分のような詐欺被害に遭う人がいなくなってほしい」と取材に応じた男性。手前は、LINEを通じて送られてきた投資を誘う資料=長崎県内、榧場勇太撮影

 今年4月だった。長崎県内に住む男性会社員(63)が手元のスマホを確認すると、いつの間にか、株式投資をテーマにしたLINEグループに自分が招待されていた。

 「本当に本物かな?」

 グループの主宰者の名前を検索すると、経営に関して複数の著作がある大学名誉教授の名前だった。少し不信感も抱いたが、「よく分からないけど、とりあえず」と、グループに加わった。

 メンバーは約100人。チャットでは、毎週、水曜と日曜の午後8時から、投資に関するセミナーの動画が公開された。

 消費者物価指数、米国の雇用統計など国内外の株価に影響を与える経済指標を解説し、株を購入するタイミングを指南していた。

 株価をチェックすると、発表された指標に合わせて株価が上下している。長年、金融業界で営業職に就いていたが、自身は株式投資の経験はなかった。

 「役に立つ、勉強になる」と感じた。

 2人の息子は独立し、妻と2人暮らし。時間に余裕もできた。老後の資金として積み立てていた投資信託などの運用実績が良かったこともあり、株式投資を始めてみようと考えていた矢先だった。

 セミナーの動画を参考に、株取引の勉強をするようになった。チャットでは他のメンバーと投資に関する情報交換もした。

 6月下旬、チャットに米国の投資ファンドが日本に進出するという情報が流れた。会社名をスマホで検索すると米国に実在する投資ファンドの名前だった。

「利益が出る」、説明に飛びついた

 このファンドを通じて株取引…

共有
Exit mobile version