イラン・イラク戦争に従軍したときのアハマッド・レファヒーさん(右)。当時を忘れないように、写真をスマホに残している=2025年6月13日午後3時45分、東京都武蔵野市、杉山あかり撮影

 イスラエルがイランの核関連施設などへの「先制攻撃」に踏み切った。緊迫する中東情勢に、日本に住むイラン出身者らからは憤りと早期終息を求める声があがった。

 「起こるのではないかと思っていたことが現実になり、ショックです」

 東京・吉祥寺のペルシャ絨毯(じゅうたん)の輸入・販売店「カスピアン」。来日して30年以上になる代表取締役のアハマッド・レファヒーさん(56)は落胆した。

 昨年4月に在シリアのイラン大使館がイスラエルから空爆を受けるなど、緊張は高まっていた。この1年、母国にも戦火が広がるのではないかと懸念していた。

弟からの電話 家族無事も自宅から見えた煙

 イスラエル軍の攻撃を知ったのは13日午前。首都・テヘランに住む弟からの電話だった。家族は無事だったが、爆発音が聞こえ、自宅から外を見ると5~6カ所で火と煙が上がっている、と伝えられた。

 ペルシャ絨毯の作家らも心配だ。経済制裁の影響で生活が苦しい彼らを支えたいと、商売を続けてきた。だが、今後も戦闘が長引き、現地からの輸入が途絶えないか気をもむ。

 レファヒーさんは19歳のときにイラン・イラク戦争に従軍した経験がある。当時、所属部隊の仲間約300人を失った。「戦争は誰も勝たない。これ以上拡大せず、どこの国でも人が亡くならないことを望みます」。国際社会における日本の役割も大きいとし、「平和が一番だというメッセージを出すなど、はたらきかけてほしい」と話した。

「市民が巻き添えになるのが戦争」

 来日して30年以上になる関東地方の50代のイラン人男性は「テヘランに住むきょうだいや親族のことが心配だ」と肩を落とした。

 2、3日前から、現地や日本のイラン人コミュニティー内でイスラエルによる攻撃が近いとの情報が飛び交い、「今日か? 明日か?」と落ち着かなかった。

 今朝、チェックしていたニュースサイトやSNSから突然、「テヘランの西で大きな爆発音」「すごい音がする」といったコメントが飛び出した。攻撃が始まったと直感し、日本に住むイラン人と電話を掛け合い、現地の家族や友人の無事を確かめようとしている。

 男性もイラン・イラク戦争に兵士として参加し、負傷した経験がある。「イスラエルは核施設をピンポイントで攻撃したと主張するだろうが、市民が巻き添えになるのが戦争だ。体で感じた、あの恐ろしさを他の人に経験させたくない。これ以上広がらず、早く攻撃が収まって欲しい」と語った。

帰り際の手作りスイーツ イランにほれ込んだ日本人

 東京都の自営業、杉森健一さん(36)は、日本でイランの文化や魅力を発信している。初めて現地を訪れたのは25歳の時。知り合ったイラン人にテヘランを案内してもらい、帰り際にはシナモンで「KEN」と書かれた手作りスイーツを手渡された。人の優しさに打たれ、その後も10回足を運び、先月もテヘランなどに滞在したばかりだ。

 都心の市街地が攻撃されることに衝撃を受けているといい、「現地で生活している方々が本当に心配だ」と話す。

 現地にほれ込み、旅行の選択肢の一つにしてほしいと情報発信してきただけに、イランとイスラエル間の対立激化を懸念している。「イランは僕にとって、人生そのもの。早く事態が収まり、行き来できる地域になってほしい」

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