「トー横キッズ」の少年少女らが集まる東京・歌舞伎町の新宿東宝ビルの周辺。そこから200メートルほど北にある「大久保公園」の周りには、「立ちんぼ」と呼ばれる複数の若い女性が数メートル間隔で立つ。

 昨冬まで、毎日のように20代女性もそこにいた。

 クリスマスだろうが、正月だろうが関係なく、大久保公園の周りに立った。

新宿・歌舞伎町の大久保公園周辺の路地に立つ女性たち

 身分証すら持たずに、歌舞伎町に流れ着いたのは、2023年夏のことだ。

 関東地方で高校卒業まで育った。女性によると、父は機嫌が悪かったり、酒に酔ったりするとささいなことで母や女性に暴力を振るったという。

 それでも、警察沙汰にしたくなく、周囲には助けを求められなかった。

 次第に母からも暴力を振るわれるようになったといい、「家に居場所はない」と、中学生の時は友人の家に泊まることが増えた。

 リストカットをするようになったのは、この頃からだ。

 痛みは感じない。それどころか、心が落ち着く。虐待や学校でのいじめを、一時的でも忘れることができたという。

SNSで見つけた動画

 高校卒業と同時に家を飛び出した。知人の紹介で居酒屋で働くことになり、一人暮らしを始めた。

 料理が好きだったから、居酒屋の仕事は楽しかった。何より、両親から離れての自立した生活にほっとする。給料はアイドルの「推し活」にもあてた。

 振り返れば、このときが一番楽しかったと思う。

 でも人間関係に悩み、居酒屋…

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