三宅裕司

 軟派か、硬派か。劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の新作公演「ニッポン狂騒時代~令和JAPANはビックリギョーテン有頂天~」は、音楽と学生運動に情熱を捧げる若者たちが交差する。ノンポリ学生だったという座長の三宅裕司が、政治の季節を取り上げるわけは。

 1960年代に流行したアメリカンカバーポップスは、音楽誌の編集長だった漣(さざなみ)健児が米国で選んだ曲を訳し、日本の歌手に歌わせた。ポップスやロックのエイトビートに乗せた最初の日本語の詞とされ、現在のJポップの源流と言われる。ミュージカル・アクション・コメディーを掲げるSETで取り上げたい題材だった。

 一方、60年の安保闘争で学生運動をした年配者が「結局、何も残ってないな」とテレビ番組で振り返るのを三宅は見た。そこから、アメリカの文化に浸る若者と、アメリカと結ぶ安保条約に反対する学生の対立、という構図を思いついた。

 演出の考えどころは、そんな歴史を知った現代の若者が言う台詞(せりふ)だ。いまはSNSで自分の意見や文句を言える。不特定多数に意思を示す手段がなかった60年代は行動を起こすしかなかった、とみる。「いまの若い人が同じように立ち上がることができるのか」との思いがよぎる。

 現在も東日本の空は米軍が管制権をもち、米軍の駐留経費の一部は思いやり予算で日本側が負担する。石破茂首相は自民党総裁選で日米地位協定の改定を掲げた。くしくも、今作の東京公演の千秋楽は衆院選の投開票日だ。11月の神戸公演の内容や台詞は結果に左右されるか。「なるべく変わらないよう、芝居の着地点をどこにするかを考えてます」

 気になることがある。

 「いまの若い人たちは、恋愛…

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