会見で話す日本製鉄の橋本英二会長=2025年6月19日午前10時6分、東京都千代田区、竹花徹朗撮影

 日本製鉄の橋本英二会長は19日午前、米鉄鋼大手USスチール買収手続きが完了したことを受け、記者会見を都内で開いた。米政府が取締役の選任などでUSスチールの経営に一定の影響力を持つことについて、橋本氏は「事業投資に必須である経営の自由度と採算性については確保されており、今回の合意は当社にとって十分に満足のいくものだ」と語った。

 トランプ米大統領は、日鉄とUSスチールが米政府との間で国家安全保障協定を結ぶことを条件に買収を容認した。日鉄はUSスチール株の100%を141億ドル(約2兆円)で取得して完全子会社化したが、経営の重要事項への拒否権を持つ「黄金株」1株を米政府に無償で発行。経営の自由度を確保しながら巨額の投資に見合う収益を生み出していけるかが課題になっている。橋本氏は、黄金株の発行について「投資の実行を監督したいという米国政府の意向を受け入れることとし、これを黄金株という形でわかりやすく表すことを提案し、合意に至った」と説明。2兆円の買収費用についても、鉄鋼設備を新たにつくるケースと比較して「極めて合理的、効率的」とした。

 日鉄の発表によると、国家安全保障協定に基づき、USスチールの取締役の過半数は米国人とするほか、社外取締役の1人は米政府が選任し、加えて2人の選任も米政府が承認する。CEO(最高経営責任者)も米国人とし、会長は日鉄の森高弘副会長が兼ねる。2028年までに110億ドル(約1・6兆円)を生産設備などに投資することも約束した。

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