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 買収の「断固拒否」から、一転して容認へ――。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画をめぐって、トランプ大統領の主張は大きく変遷してきた。この半年の発言を丹念に追うと、「外資支配への抵抗」と「巨額投資の獲得」という相反する二つの成果を「いいとこ取り」したいとの考えに、トランプ氏が徐々に収束していったことが浮かび上がる。

買収計画に対する最終判断を、トランプ氏は5日にも下すことになっています。トランプ氏の発言を通じて、一連の動きを振り返ります。

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2025年5月30日、米ペンシルベニア州にあるUSスチールの工場で演説するトランプ大統領=ロイター

 1901年創業で社名に「US」を冠し、米国の工業化を支えたUSスチールは、米国産業を象徴する企業の一つだ。その企業を外資による支配から守るという訴えは、トランプ氏の金看板である「米国第一」との相性が抜群だった。

 昨年の大統領選中、トランプ氏は日鉄による買収への「断固反対」を貫いた。ナショナリズムを前面に押し出し、鉄鋼生産に携わる労働者たちのプライドをくすぐった。

 USスチールの本拠地である東部ペンシルベニア州は選挙戦を左右する激戦州の一つ。買収の「断固反対」は、労働者たちの支持取り付けに有利だと考えたとみられる。

 当選後の12月も、トランプ氏は「大統領として、私はこの取引が成立するのを阻止する」とSNSに投稿した。「かつて偉大で強力だったUSスチールが、外国企業に買収されることに全面的に反対だ」とも断言した。

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 かたくなに「絶対阻止」の姿勢を崩さなかったトランプ氏が、驚きの「軟化」を見せたのは、大統領に就任して2週間が経った今年2月7日だった。

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