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バングラデシュ南東部コックスバザールの難民キャンプで2025年2月11日、米国際開発局(USAID)のロゴが描かれた容器に入った食べ物を食べるミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの子どもたち=ロイター

ニコラス・クリストフ

 米国の対外援助プログラムに精査と改革が必要だという点で、トランプ大統領とイーロン・マスク氏はもっぱら正しかった。だが現状でこの2人の億万長者が成し遂げたのは、世界の最も貧しい子どもたちを混乱と残酷さが渦巻く大釜の中に押し込めるということだ。

 米国際開発局(USAID)を数十年間にわたって取材してきた私は、世界各地の取材先に連絡を取り、トランプ氏とマスク氏による解体の実態を探った。

 ナイジェリアのソコトでは、USAIDの支援を受ける緊急食料配布センターで、重度の栄養失調の子どもたちの命を救ってきたペースト状の栄養治療食が底を突き、幼い子どもたちが飢えに苦しんでいる。近くの倉庫には治療食があるが、USAIDの許可がなければ持ち出すことができない。USAIDはマスク氏による混乱のさなかにあり、許可も出せないような状態なのだ。

 「何千人もの子どもが命を落とす可能性がある」。USAIDの栄養アドバイザーだったエリン・ボイド氏は現地の状況についてそう語った。

 ウガンダでのエボラ出血熱の流行は3都市に広がっている。同国政府は、これまでUSAIDが給料を払っていた医療スタッフに「愛国心をもってボランティアとして働き続けてほしい」と懇願した。

 現地の医師によると、USAIDが機能しなければ、エボラ出血熱が拡大するリスクが高まり、米国民にも感染が及ぶかもしれないという。鳥インフルエンザであれ、エボラ出血熱であれ、そしてその他の病気であれ、伝染病やパンデミックに対する防御の最前線にいるのは、堅牢な体制を持つUSAIDであることを再認識させられる。

 私がこの二つの事例を挙げるのは、前者は人道的な価値観を、後者は米国の国益を象徴しているからだ。USAIDはこの二つを併せ持つ機関なのだ。

女性と子どもが最大の被害者

 混乱の報告は世界各地から届…

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