興行収入が100億円を超え、大ヒットとなっている映画「国宝」(李相日監督)で、華やかな場面のロケ地となった文化施設がにぎわいを見せる中、和歌山県北部に建つ昭和感漂う渋いホテルにもファンが押し寄せている。外観からは劇中のどこに登場したかまったくわからないが、実は予告編でも流れる名シーンがここで撮られていた。
ロケ地となったのは同県岩出市の「ホテルいとう」。支配人の北田信幸さんによると、1980年代にオープンした。当時は結婚式の需要も多く、県内の名湯として知られる白浜温泉のお湯を運び込んだ大浴場など豪勢な運営をしていたが、今は地元団体の会合や、宿泊では部活動の合宿やインバウンド客などを取り込み、地域住民に親しまれる存在となっている。
ロケ地の提案などをするわかやまフィルム・コミッションから北田さんに連絡が来たのは2023年。その年の冬に李監督とスタッフが県内各地を訪れ、ホテルいとうが選ばれた。「屋上からの山並みの風景を気に入られたみたいです」
主人公の喜久雄演じる吉沢亮さんらが撮影に来たのは昨年4月で、朝から夜まで1日かけ、宿泊はしなかった。出演者らからは緊張感が漂い、スタッフはカメラに映る小物すべてを用意していたという。
撮影に使ったのは屋上と客室1室で、ホテルは撮影日も通常営業していた。駐車場にクレーン車も持ち込まれたが、「誰にも気付かれず、ホテルスタッフの一部も知らないままでした」と笑う。
6月6日に映画が公開されると、エンドロールにホテルいとうの名を見つけた人から「いったいどのシーンで?」といった問い合わせが来るようになった。
ホテルいとうで撮られたのは…