サッカー スコアの余白 記者のつぶやき
539日ぶり。その歳月に対する感慨深い言葉を待ち構えた記者の予想を、J1神戸のMF斉藤未月は見事に裏切った。
「チームを勝たせるプレーをしてこそピッチに立つ意味、価値がある。その意味では全く足りない試合だったと思う」
2月8日の富士フイルム・スーパーカップ。左ひざに大けがを負った2023年8月以来の公式戦でフル出場した。広島に敗れた後、落胆を隠さなかった。
もちろん、復帰を支えてくれた家族やサポーターへの感謝の思いが一番にあった。だが、「539日」の苦難に自ら言及することはなかった。「僕はその、感動どうこうというのは、なくてもいいと思っている」
この言葉にプロ意識の高さをみた。J1デビューは17歳のとき。経験豊富な26歳の最大の武器は、遠慮なく自己主張ができるハートの強さだと思う。
湘南時代の恩師、J1京都の曹貴裁監督は、斉藤を途中交代させたとき、「泣きじゃくって『なんで俺を代えるんですか』と訴えられた」という。
神戸でも、大迫や武藤らベテラン勢に臆することなく要求を伝えられる貴重な存在だ。「常勝」のメンタルを先輩から若手につなぐ架け橋として、背番号5にかかる期待は大きい。
「ここ(復帰)は目標ではない。シーズン後、どのような形でチームを優勝に導けたかがすごく重要」。感傷に浸ることなく、求めるのは結果のみ。自身のSNSに記してきたように、斉藤のキャリアは「まだまだこっから」。その歩みを記者もフラットな姿勢で見守りたい。