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北岡賢剛氏が理事長を務めていた社会福祉法人グロー=滋賀県近江八幡市

 社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の理事長だった北岡賢剛氏から性暴力やセクハラを受けたとして、元職員の女性ら2人が損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は昨年10月、北岡氏による性加害を認める判決を出した。性暴力やセクハラに私たちはどう向き合っていけばいいのか。2人に話を聞いた。

憧れの職場に就職、直属の上司から……

 〈被害にずっとふたをしてきた。仕事に没頭することで、なんとか自分を保った。でも、怒りは消えることなく胸の奥に煮えたぎっていた〉

 女性(37)は2012年、社会福祉法人「グロー」(当時は滋賀県社会福祉事業団)に就職した。学生時代に衝撃を受けたアール・ブリュット展を主催していたのがグローだった。

 滋賀県近江八幡市に美術館を立ち上げ、08年にスイス、10年にフランスでアール・ブリュット展を手がけたのが北岡氏だった。日本の先駆的な存在だった。就職後、アール・ブリュット展を担当する部署に配属された。部長が北岡氏だった。

 北岡氏からのセクハラは、しばらくしてから始まった。「好き」とメールを送ってきたり、手をつないできたり。

 職場では飲み会が多く、出張先での「部屋飲み」もたびたびあった。14年と15年、出張先のホテルで性暴力の被害にあった。部屋飲み後、北岡氏から「仕事の話があるので残るように」と指示された。キスをされ、胸や性器を触られた。口止めもされた。

 セクハラなどの加害行為は続いた。19年に退職した。

 退職後、相談機関に「それはレイプです」と言われ、自分の身に起きたことを自覚した。ホテルの密室で起きた性暴力を立証するのは難しく、裁判で勝てるか不安だった。それでも訴訟に踏み切った。

 〈昨年10月の判決では、2人への行為を性的欲求を実現させるための「継続的な不法行為」と認定した〉

 安堵(あんど)して涙があふれ出た。判決が出るまで「被害はうそだと思われるのではないか」という不安がずっとあった。「ようやく、自分で自分を認めてあげられるようになりました」

「独自に調査できる立場にあったはず」

 滋賀県は裁判中の24年4月…

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