兵庫県明石市の精神科病院・明石土山病院で2021年4月に長男が死亡したのは、病院側の不適切な長期の隔離や注意義務違反があったためだとして、加西市の両親が26日、病院を運営する医療法人社団正仁会に損害賠償など約5700万円を求める訴えを神戸地裁に起こした。
死亡したのは初田竹重さん(当時50)。訴状によると、不安定な精神状態が続いていた初田さんは19年5月に同病院を受診し、入院することになった。
入院直後の同年6月から2年近くにわたり、施錠された小さな部屋に断続的に隔離され、最後の約4カ月は終日の隔離が続いた、としている。
21年4月14日朝、隔離室内で心肺停止の状態で見つかり、死体検案書には、のどに食パンのかたまりが詰まっていたなどと記されていたという。
原告側は、初田さんに対する長期の隔離は「正当な医療または保護を受ける権利を侵害する」として、慰謝料500万円を請求。
さらに、「漫然と長期間の隔離を継続した」ことで嚥下(えんげ)機能が低下し、朝食のパンをのどに詰まらせて死亡したと指摘。「死亡当日、食事中の見守り、頻回の巡回や声がけを怠った」などと、病院側に注意義務違反があったとして、損害賠償を求めている。
26日に神戸市内で記者会見した父親の毅さん(81)は「同じような目に遭う人を出したくない」、母親の美千子さん(79)は「息子の無念を晴らすために提訴することにした」と話した。
病院側の代理人弁護士は取材に「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。(小田健司)