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 2025年春夏シーズンのパリ・ファッションウィーク(PFW)期間中の9月27日、パリ市内南部でヴァレンティノがショーを開催した。今年4月にクリエーティブ・ディレクターに就任したイタリア人、アレッサンドロ・ミケーレは15年からグッチを率いて一大ブームを巻き起こし、2年前に退任した大物デザイナー。新作群では、得意とする華やかな装飾を前面に押し出した「ミケーレ節」を見せて賛否の渦を沸き起こしたが、その着想源は意外なところにあった。

写真・図版
ヴァレンティノのショー

 荘厳なBGMとともに次々と登場するレースやチュール。モデルが歩くたびに揺れる大きなフリルのドレス。ジャケットのボタン位置やシューズについた目立つリボン。そして「ここまでやるか」と思わせるようなド派手で豪華な刺繡(ししゅう)の数々……。

 かつてグッチの方向性を大転換させ、世界中のファッションピープルを熱狂させたミケーレが、モードの第一線に帰ってきた。グッチの本拠地であり自身の祖国イタリアのミラノではなく、モードの都パリでのショーで。

 ミケーレがグッチのクリエーティブ・ディレクターを退任して以降、ファッションの大きな潮流となったのは装飾主義の対極をなす「クワイエット・ラグジュアリー」だった。新生ヴァレンティノのショーは、そうした流れに対して明確に異を唱える決意表明といっていい。柄やレースを重ねたデコラティブな装いは観客を圧倒し、フィナーレでは大歓声がわきおこった。

 今回のPFWの開幕前から…

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