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震災で透析患者を避難させた体験談を集めて教訓と課題を洗い出した理学療法士の高松克守さん。右後ろにあるのが透析装置(撮影のためマスクを外しています)=2025年2月20日、福島県いわき市常磐上湯長谷町、ときわ会常磐病院、西堀岳路撮影

 糖尿病などで人工透析が必要な患者たちの多くは、東日本大震災で津波に遭わず、東京電力福島第一原発事故の避難指示区域でなくても、透析を受けるために避難することを余儀なくされた。避難先で病状が悪化し亡くなった人もいる。福島県いわき市の病院職員が、当時の教訓を掘り起こし、必要な備えをまとめた論文を発表した。

 論文は、ときわ会常磐病院で透析室の理学療法を担当する医科学修士の高松克守さん(33)が中心となり、同会や県立医科大の医師らとともにまとめた。国際防災誌「International Journal of Disaster Risk Reduction」に掲載された。高松さんは、全国に約34万人いる透析患者の災害避難に特化した課題の分析が、今もあまり行われていないのに気づき、「各地で災害が発生し続けているのに、透析患者が負う困難が注目されていない。震災の教訓を風化させないよう、将来の減災のためにも専門的な記録や提言が必要と考えた」と話す。

 常磐病院は原発事故の避難指示区域外にあり、津波被害もなかったが、停電で透析装置が動かせず、断水のため1人1回の透析に約200リットル必要な水の確保ができなかった。鉄道や高速道路が不通になり、原発事故の影響もあって物流が途絶え、血液の抗凝固薬、血液を濾過(ろか)するフィルターなど必需品の供給も止まった。同会傘下の病院も含め透析患者計581人を県外へ避難させるしかなかった。高松さんの調査では、県内で1223人の透析患者が一時的に移住を余儀なくされたという。

 避難開始は発災約1週間後の…

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