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船を追い越し、海面を跳び回る野生イルカ=2020年8月5日、石川県珠洲市三崎町寺家沖、出村正幸さん撮影

 福井県沿岸で50人以上をかんだ野生イルカは、初めから福井にいたわけではない。2020年8月、能登半島の先端の石川県珠洲(すず)市に現れ、住民から「すずちゃん」と呼ばれていた。名付け親だという出村正幸さん(48)に、当時のイルカや町の様子を聞いた。

――イルカを最初に見たのはいつごろですか?

 「2020年8月3日です。(珠洲市三崎町)寺家(じけ)の海沿いの道を運転していたら、知人の小泊正子さんたちが何やら立ち話をしていました。何があったのか尋ねると『あそこを見て』と海を指さすのです。見ると50メートルほど先の海面にイルカがいて、ジャンプしました。小泊さんは2~3日前からイルカがいることに気づいていたそうです」

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イルカが跳びはねながら漁船を追い越していった時の様子を語る出村正幸さん=2024年9月16日午後1時15分、石川県珠洲市三崎町寺家、乗京真知撮影

 「さらに2日後、(寺家にある)自宅前の海を眺めていたら、またイルカが見えました。海から観察しようと考え、漁師の父に頼んで船を出しました。出発して間もなくイルカが現れました。船の周りを10回連続でビョンビョン跳び回り、ようこそと言わんばかりの興奮ぶりでした」

――イルカのうわさは、どう広まったのですか?

 「8月7日以降に地元紙などが写真付きで報じ、県内外から見物客が来るようになりました。イルカの御朱印ができたり、郵便局に写真が飾られたり。ある種のブームとなりました」

――名付けの経緯は?

 「珍しいイルカのことを語り…

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