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堀切功章さんは社長職を「組織の役割のひとつ」ととらえた。「部長や課長と同じ。全人格で社員全員の上に立っていると思うと、自分を見失います」と振り返った=千葉県野田市のキッコーマン食品野田工場、村上健撮影
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 キッコーマン会長の堀切功章(のりあき)さん(73)は「自然体」を信条にする。創業家の出身で、同僚から意識されてしまう。だが運命だと受け入れ、自分は自分らしくありたいと努めてきた。業績を伸ばした経営の土台にも、自然の流れに沿って柔軟に対応する姿勢があった。原点は高校の空手部、先輩の一言だったと語る。

「自然体がいちばん強いんだ」

 もっと強くなりたい。幼いころは体が弱かったが、成長とともに変わってきた。心も鍛えたい。高校に進んだ1967年、その思いで空手部に入った。まずは基礎の構えや形を習う。先輩に言われた。「自然体がいちばん強いんだ」。基本の立ち姿勢のことだ。力を抜くのが大切だとされる。試合では「リラックスしている人がなぜ強いのか」と考えた。隙だらけに見えて、まったく隙がない。逆に自分は「全身に力を込めて大きく見せようとしていました」。

 空手の枠を超えて、「自然体」に心を向けたのは74年、現在のキッコーマンに入社したのがきっかけだ。創業8家のひとつ、堀切家に生まれた。会社には各家から世代ごとに1人しか入社しないという不文律がある。跡継ぎと目された兄が若くして急逝、「気楽に育ってきた」とする次男だが、白羽の矢が立った。

 社内では、創業一族だと妙に…

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