Re:Ron連載「竹田ダニエル 私たちがつくる未来」第6回
2日夜(日本時間3日)にロサンゼルスで行われた第67回グラミー賞の授賞式で、Doechii(ドーチ)が最優秀ラップ・アルバム賞を受賞した。この賞を獲得した女性ラッパーは史上3人目。彼女の受賞は、ラップにおける女性の地位向上を象徴するものでもあり、その一方で、彼女を取り巻く議論や話題は、いまだに女性アーティストが直面する矛盾を浮き彫りにした。
Doechiiはスピーチで涙ながらに黒人女性や少女たちに向けて、エンパワーするような言葉を力強く語った。「このミックステープには心と魂を注ぎました。自分の人生をさらけ出し、多くのことを経験しました。禁酒に専念し、神は私に報いてくれると告げました」と語った。
さらに、黒人女性たちに向けて「あなたなら何だってできると伝えたいです。何事も可能です。誰にも、ここにいる資格がないとか、肌の色が濃すぎるとか、十分に賢くないとか、大げさすぎるとか、うるさすぎるとか、そういったステレオタイプを押し付けられないようにしてください。あなたは今いる場所にふさわしい存在であり、私はその証しです」とメッセージを送った。
MVで「全裸」、衝撃的な自己表現
Doechii、本名Jaylah Ji’mya Hickmon(ジェイラ・ジマイア・ヒックモン)は、1998年8月14日にフロリダ州タンパで生まれ育った。高校時代にラップの活動を開始し、2016年に「Girls」という楽曲をSoundCloudに公開した。2020年には自主制作でデビューEP『Oh the Places You’ll Go』を発表し、その中のシングル「Yucky Blucky Fruitcake」がTikTokでヒットとなり、物語性とユーモアあふれるパフォーマンスが話題を呼びレコードレーベルからの注目を集めた。
2021年にはEP『Bra-Less』をリリース。同年、SZAのツアーのオープニングアクトも務めた。2022年3月、Kendrick Lamarらを輩出したTop Dawg EntertainmentとCapitol Recordsと契約を結び、同レーベル初の女性ラッパーとなった。同月、シングル「Persuasive」をリリースし、続いて「Crazy」も発表。「Crazy」のミュージックビデオでは、「全裸」という手段で衝撃的な自己表現を行い、黒人女性の身体を過剰に性的に消費する社会に対して抵抗の意を示したことで話題を呼んだ。2022年8月にはメジャーレーベルからの初のEP『She / Her / Black Bitch』をリリースした。
音楽業界、特にラップというジャンルにおいて、黒人女性が「あるべき自分のままでいる」ことは、いまだに容易ではない。賞の数や評価が増えたとしても、ラップにおける女性の存在は依然として「(周りの人から見た)あるべき姿」の枠に押し込められがちだ。
「女性らしさ」の境界線を挑発
グラミー賞でのパフォーマンスもまた、そうした矛盾を示していた。
「Catfish」と「De…