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富川光教授が新種発表したヨコエビの一つ。山口県美祢市の「秋芳洞」の地下水に生息し、京都大の研究グループとともに新種発表した=富川教授提供

 昨年5月、豪州の生物科学誌に掲載された論文は、ヨコエビのファンを驚かせた。

 小さな体を横にして素早く動くヨコエビ。南米ペルーの温泉で見つかった新種が、52・1度の水温でも生存できることがわかったのだ。これまでは水温38度が最高とされ、大幅に上回る記録。このヨコエビを分析し、新種として発表した研究者の1人が、広島大学教育学部の富川光教授(45)=動物分類学=だ。

 ヨコエビは海やわき水などに生息する甲殻類の一種。地球上に1万種生存し、国内では約400種が確認されている。

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深海に漂いながら生息するトンガリネコゼヨコエビ=富川光教授提供

 この奥深いヨコエビとともに、研究者人生はスタートした。山形大学理学部に在学中、卒業論文のテーマとして教授にすすめられ、ヨコエビの体の形や触手の数などから分類してきた。

 その卒論研究では、東北地方で淡水のヨコエビを採取。針の先を少し曲げたお手製の道具と顕微鏡を使って詳しく調べ、早くも新種を確認した。

 今では、国内外から「新種とみられるヨコエビを捕まえた」との情報提供が寄せられる。「ありがたいことですが、処理しなければならないサンプルが多すぎて……」とうれしい悲鳴。

ある神社の湧き水にしか見つからない種も

 もちろん自らもヨコエビ採集に向かう。船は苦手だが、マリアナ海溝のヨコエビを採るために洋上生活を3週間送ったことも。

 こんな発見もあった。

 国の特別天然記念物の鍾乳洞…

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