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知床半島の先端部に生息するオジロワシ
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 知床半島での携帯電話の利用エリア拡大をめぐり、国や携帯電話事業者などで作る推進会議は11日、北海道斜里町で会合を開き、世界自然遺産の「核心部」とされる知床岬地区での基地局計画の凍結を決めた。生態系や環境への懸念から地元2町のうち斜里町が計画の見直しを要望。「地元の合意」が崩れ、国の補助事業が成り立たなくなった。

 推進会議は2年前の小型観光船の沈没事故を受け、携帯電話の不感地帯解消を目的に発足。総務省主導で関係省庁や北海道、地元の斜里町と羅臼町、携帯大手4社などで構成し、知床半島に4基地局を新設・増強する計画を決めた。

 知床岬地区は国立公園の特別保護地区ながら、電源設備としてサッカーコート並みの敷地に太陽光パネル群(264枚)、アンテナを設置する知床岬灯台までケーブル類の埋設(約2キロ)などを計画。環境省は今年3月に事業を許可した。

 ところが、4月の推進会議後の記者会見で初めて工事の規模が公になり、規模の大きさに驚いた斜里町が計画の見直しを国に要望。町議会も計画反対を決議し、地元で反対署名運動も起こった。

 希少種オジロワシの影響評価をしていなかったことも発覚し、工事は中断。知床世界自然遺産地域科学委員会は6月、携帯電話事業者にオジロワシに加えて、植生の再調査を求めた。

 希少猛禽(もうきん)類のオジロワシの影響評価は2繁殖期(1・5年)の調査が一般的で、科学委員会の評価を経ると着工は早くて3年後の27年春と大幅な遅れが見込まれていた。

 会議後の記者会見で、総務省の担当者は「事業の大前提だった『地元2町の合意』が変わってしまった。今後、斜里町で計画推進の合意形成ができなければ事業はできない」と語った。

 一方、知床半島東側のニカリ…

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